D-102EXGはONKYOが2000年に発売した2wayブックシェルフスピーカー。発売当時の定価は64,000円ですので現在の税率に照らし合わせれば7万円くらいでしょうか。
ウーファーは13cmのシルクOMF、低音を補強するダクトは前面にあるフロントバスレフポート型で、その奥行きある箱から出る厚みのある中低音域が魅力。高域はソフトドームツィーターで、恐らくツィーターとウーファーが若干被り気味でそれが魅力的な音色に繋がっていると思われる。
音のバランスが非常に優秀でヴォーカルは前に飛び出してくる感じで、楽器の音は声の後ろで鳴ってます。音の前後感の空間表現が秀逸で、若干柔らか目の高音域が結構伸びるのでそれがふわぁーっと広がる感じ。サックスやトランペットのような楽器を聴くと特にわかりやすい。反面ヴァイオリンの音は輪郭をしっかり力強く鳴らすので、硬すぎず、柔らか過ぎず。絶妙なバランスです。ウォーム系とクール系の良い所取りというか、中間的な感じですが、かと言ってモニター的な音では全くない。
これ以降のONKYOスピーカーはより上の高音域の再生が可能なリングツィーター採用の為か若干硬めで、微細な音も全部出すよ!な輪郭がハッキリしすぎなモニター気質のクール系になりますので、個人的にはここまで来るとちょっと聴き疲れる音になる。
その点D-102EXGのソフトドームツィーターは高音域に独特の艶や輝きがあり、音の輪郭は精確に出しますがウーファーから出る豊富な中低音域でバランスを取って硬すぎず、柔らか過ぎず絶妙なバランスの音になってます。柔らかめの音だけど輪郭は割とハッキリ出てる、と表現すべきかな。
そして奥行きのある箱から鳴るこの厚みのある中低音域は、気持ちブーミーな低音(だがそれが気持ち良い)。
試聴した友人にはこれだけ低音出す=ブーストすると通常は音がこもるのに全然こもった感じがしないのが謎、と言われました(笑)
独特な艶と輝きのある高域と相まって、奏でられるその音は音楽性に優れたとても魅力的な音です。
箱自体はそんなに高いスピーカーではないので、箱をしっかり作って振動を抑制するのではなく上手く箱を鳴らして利用するよう音作りをしています。その為、このスピーカーは薄〜くかかる独特なリヴァーブ感があり、これが色気のある美音となり、ブーストかかった低音と合わさってエネルギッシュな癒し系の音、という唯一無二のキャラクターとなっています。
アニソンやヴォーカルのLIVE、楽器の響きに艶や色気があり低音も気持ち良いからとにかく音楽が楽しいのだ。
とにかく低音は結構出ますが、それもセッティング次第。また、サイズ上の制約から超低音域はオミットされてるので中低音域に厚みを持たせて、部屋の反響音を積極的に利用してあたかも低音が出ているように感じ聞かせるスピーカーです。ですので12〜15畳程度の奥行きのある部屋では反響音が足りず低音が出ませんので注意が必要。スピーカーと試聴ポジションの距離/奥行きは浅くした方が低音が出ます。そしてスピーカースタンドは必須で、高音域を抑え低音域が出やすい木製のスタンド推奨。
また、超低音域がオミットされている事で低音が重くならないので低音にスピード感が付与され、低音の抜けが良くなるという強みがあります。
これはフロントバスレフポートの特色も相まっている故かと思いますが、音の傾向としては躍動感溢れる元気な音が特徴。その為ハイスピードな打ち込み系の曲が大変得意で、アニソンやゲーム/映画サントラ、ユーロビートでは無敵です。
しかし、元気な音という事はつまりうるさいという事(笑)
このスピーカーはハイスピードな打ち込み系のアニソンやユーロビートを聴いて熱狂するには向いていますが、ゆったりまったり聴きたい時には少し低域が過剰でうるさいとか、キレイな高域が出てる→つまり場合によっては出過ぎでうるさいと感じたりするのでその辺は痛し痒し。
例としては映画トップガンのサントラやadoさんのうっせぇわ、等のヴォーカルがありかつ、ノリと低音が大事な曲は凄く相性が良いです。あとはサザンやB'zとかでしょうか。電子楽器の多い菅野よう子の曲もオススメです。ハンス・ジマー作曲の映画サントラも相性良いです。
反面JAZZ等のまったり系も元気に鳴らしてしまうので、これはコレで楽しく聴けるが曲や再生機材の相性次第で人によってはうるさいと感じるかと思います。
本機で聴くJAZZも私は好きですが夜寝る前に聴くには曲によってはちょっと高域がキツイと感じる事もあります。
私はまったり聴きたい時用に寝室にVictorのフラッグシップウッドコーンスピーカーSX-WD500を配置していますが、D-102EXGと比較すると圧倒的にウォーム系の音で出てくる音が聴き疲れしない優しい音でこれはこれで唯一無二の音。
結局オーディオとはどんな音が聴きたいかで最適解が異なるのです。
2023/9/2「」内の記載を追記
「キャロル・ウェルスマンJAZZアルバムを試聴してみましたが、傾向として綺麗な美音にまとめてしまうので、ハイレゾっぽいというか現代的な響きの高音質な音になってしまいアナログ的な温もりとかはない感じの音になります。SX-WD500やQUAD11Lと聴き比べると分かりやすいですが、この辺の違いが好み別れる所で私も普段はウェルスマンのCDはSX-WD500やD-77MRXで試聴する事が多いですがたまにこの現代的なハイレゾっぽい高音質で綺麗にまとめた美音であるD-102EXGで聴きたくなります。」
総括しますと、バランスの良い音ですのであまり苦手なジャンルがないと思います。
このスピーカーの設計の狙いは恐らく、高音質を目指すのではなく、音楽を楽しく聴いて欲しい、そういう願いを込めて作ったと考えられ、実際にこのスピーカーはあらゆる音楽を楽しく元気に鳴らしてくれます。
所謂モニター系の高音質で勝負するスピーカーではなく、音の味付け/キャラクターで勝負するスピーカーです。
定価7万円弱ですが、ONKYOの後継機や上位機にはない魅力があり、その音の特色=強みは他メーカーの高級機にはない唯一無二のもの。このスピーカーの得意な分野で勝負したら他の高級機打ち負かしてしまう事も珍しくないので扱い方次第では恐ろしくコストパフォーマンスが良いスピーカーです。
良い音の出るスピーカーとは何か、価格と音質は必ずしも比例はしないし、高音質=音楽性の優れるスピーカーとは限らない。かようなオーディオの奥深さを教えてくれる、銘機だと評価できるでしょう。
総合評価 5(SS+)
項目別評価
デザイン ★★★★★5(A+)
高音の質 ★★★★★5(S 輝き/艶がgood)
中音の質 ★★★★★5(S 濃い味付け)
低音の質 ★★★★★5(SS+ 中低音域の厚みが神)
量感(エネルギーバランス)
高域★★★★✩4
中域★★★★★5
低域★★★★★5
超低音域✩✩✩✩✩0(ほぼ出てない)
歯切れの良さ★★★★★5(SS+)
音の明るさ★★★★★5
色気/艶★★★★★5(SS+)
響き/リヴァーブ★★★★★5(SS+)
丸さ/優しさ★★★✩✩3
刺激★★★✩✩3
コク/味の濃さ★★★★★5
躍動感★★★★★5
アタック感★★★★★5
元気さ★★★★★5
スピード★★★★★5
熱い音/熱狂度★★★★★5(SS+)
解像度★★★✩✩3
ウォーム★★★✩✩3
クール★★★✩✩3
癒やし★★★★★5
美音★★★★★5
音楽性の高さ★★★★★5
モニター✩✩✩✩✩0
再生環境(メイン機として使用)
プリメインアンプ∶A-1VL
CDプレーヤー:C-1VL/C-7000R
SACDプレーヤー∶C-S5VL
スピーカーケーブル∶モンスターZ1R
RCAピンケーブル∶モンスターM1000I MK2/THX認定ULT-I800
インシュレーター∶ONKYO純正(金属/ゴムハイブリッド)
スピーカースタンド∶ハヤミSB525(木製)
電源ケーブル∶OYAIDE L/i50EXs、LUXMAN JPA-15000等
壁コンセント∶Pansonic医療用WN1318K
ギャラリー